D−naughtのレコーディング。
「おはようございます」と挨拶をしてエンジニアの方に家から持って来たハードディスクを渡す。中には家で作って来たデータが入っている。それを取り込んでもらってトラックダウンという作業をしてもらうのだが、私が初めてレコーディングでスタジオに入った頃からは考えられない程、システムは変わったなぁと思う。
かつてはキーボード音源がたくさん運び込まれ、それが約2メートル程の高さに積み上げられているのが、スタジオの風景だった。マニピュレーターという機械専門の人が居て、そのマニピュレーターさんに一音ずつ音色作りをしてもらうのだ。長い時は一つの音色が決まるまで1〜2時間ぐらいかかる。
とにかくレコーディングはスタジオに居る時間が長かった。今はそれらの作業がスタジオに来るまでの作業に出来ることになったので、楽器を持たずにスタジオに来るという回もあって、今日はそのパターンだったのでふと一番初めの頃のことを思い出すと感慨深かったのだ。
エンジニアの方がミックスダウンをしている時間はスタジオの外で仕上がりを待つ。メンバーはスタジオに置いてあるゲームで盛り上がっていた。こういう待ち時間は割とゆる〜く時間が流れるので、みんなリラックスして過ごす時間となっている。
「出来ましたんで、聴いてみて下さい」
スタジオからエンジニアさんが出て来られた時は、「生まれましたよ。元気な男の子です。」と病院で声をかけられる感じに似ているのかもしれない。
耳を澄ませて出来上がったばかりの柔らかい皮膚の曲達を聴く。正直言うとこの最初に音を聴かせてもらう時というのは、自分の耳に自信がないので、耳を立ててチェックしながら聴くというよりも、好きで聴けるかなぁということだけを意識するようになった。
「いいのが出来た」そうメンバーが思えたらそれが何より。私の場合気になった箇所というのは、何年経っても気になってしまうので、そこを出来るだけ汲めたらいいなと思う。あとは”10年経っても自分達の音を好きでいられるように”そのことを考えて意見を出せたらいいなと思っている。
明け方までのレコーディングが少なくなったのも、システムがこうして変わったことが影響しているのだと思う。
とても健全な時間に今日の作業は終了となった。