今日はミラノを出てフィレンツェに向かう日だ。
朝ごはんを済ませて携帯の充電が出来た9時過ぎにホテルをチェックアウトする。地下鉄は階段があるのでタクシーで駅に行こうとタクシー乗り場でしばらく待つ。
来ないなぁ。
もう少し大きな通りのタクシー乗り場に移動をして、そこでタクシーに乗った。
相変わらず語学力がないが、中学生レベルの単語でやりくりしてなんとか伝わるのが嬉しい。ちゃんと理解しようと親切に接してくれる人が多く、それでとても助かっている。
ミラノ中央駅に着いたら、まず券売機を探す。今日は何時に行かないといけない、ということがないので、乗れる電車に乗って今日じゅうに着けばいい。事前の 調べでは、窓口だといじわるをされることがあるということだったので、だったら券売機にトライしてみようかなと思ったのだっ た。
これかなぁ。
三種類程の券売機が並んでいるところにやってきた。
私が乗るイタリアユーロスターのチケットはどの券売機で買えばいいのかしら。
なんとなく考えていると、50代ぐらいだと思われる中年男性がササっと近寄って来て、「チケットを買うの?」と声をかけてくれた。
「ええ、そうなんです」
「じゃぁ僕がやってあげよう」
「ええっ、いいんですか?」
すると、親切にもその男性は機械の操作を簡単な説明をしながら、券売機で指定券を買ってくれたのだった。
「あ、ありがとうごさいます」
まず男性からお釣りの5ユーロ紙幣を受け取った。続いてチャリンチャリンと残った2ユーロがお釣りが出てきたのだが・・・。
男性はそれを取ると平然とした顔で内ポケットに入れたのだった。
えぇええ~っ!
それ、勝手にもらっちゃうんですか。2ユーロ。
内ポケットにお金を入れる時に、ちょびっとダンディな仕草をしたのが逆におかしく見えてしまった。いや、それかっこわるいことなんですよ。みみっちいんですよ。
世界基準で考えて、こういうことって「男道」としてはどうなの。だって200円ちょっとなのだ。
いわゆる私は観光客狙いのスリまではいかないもののチャッカリ組にやられたということか・・。
男性はチケットの読み方をおしえてくれたので、何号車の何番の席に座るのかが苦なくわかったのは助かったが、その後電車に乗るまで何度も構内をウロウロしている男性を見かけてちょっと侘しくなったのだ。
その仕事、みっともないよ。 やっぱり・・・。
ミラノ発ナポリ行きのユーロスターは満席、だがクラス2という日本でいうところののぞみの普通指定席には各席電源が取れるようになっていて、iphoneの充電が出来るのが助かるのだ。斜め前の男の子は私が家で使っているのと同じmacをテーブルの上に開いてずっと使っていた。
フィレンツェまでは2時間弱。日本の田園風景と違うのは植物の種類が違うからなのだろう。青い空がとても似合うヨーロッパの国の車窓の景色だ。
午後1時過ぎにフィレンツェに到着。
思ったより暑く日差しもかなり強い。タクシーに乗って今日から宿泊予定のB&Bに向かう。街のど真ん中にそのB&Bはあって道を進んで行くとフィレンツェのドゥオーモを初めとする荘厳な建物達が目の前に広がった。
写真で見た時は、なんだか埃っぽい地味な街だなぁと思っていたのだが、実際に目の前にしてみると今まで見たことのない感動的なすごい景観、吸い込まれるように見ていたのだった。
ここがそうだよ。
ホテルに着いたと教えてもらってタクシーを降りると、本当に街のど真ん中という便利な立地のところだった。
B&Bに泊まるのは初めてなのだ。
普通に住居として使われているアパートメントの中に入り、外国映画で見る古いエレベーターに乗る。エレベーターを降りるとやはり外国映画に出てくるような部屋のドアが あり、そこを改装してB&Bにしているところらしい。
鍵をもらった私の部屋は明かりが入っては来るものの窓の開かない3帖ぐらいの部屋。
あれ?シャワーないの?洗面所も?
何故か部屋の番号を見たら「プライベート」と書いてある。
もしやスタッフの仮眠室を割り当られたかもしれない。
だって、なんか客室っぽくないのだ。
ま、いっか。
荷物も入れちゃったし、すぐに慣れるだろう。一室もらってホームステイでもしているかのような感覚で過ごせばいいか。
一息ついたら散歩に出かけてみた。
両替所で細かいニュアンスが伝わらずに困っていたら、後ろに並んでいた旅行者の外国人女性が日本語が話せる人だった。びっくりする程日本語が上手く、その後通訳をしてくれて助かったのだ。
フィレンツェの街中は観光客で溢れていた。こんなに観光客が多い場所だと思わなかったのだ。
ジェラートを食べたり、気になるお店に入ってみたり、ブラブラ歩く。途中の教会では50セントを賽銭箱みたいなものに入れると電気式のロウソクが一本灯るようになっていて、私も一本ロウソクを灯した。
フィレンツェで有名なものの一つにヴェッキオ橋がある。両側に店を構える普通の道に見えるのだが、そこは橋になっていて写真でもよく見る場所だったので、訪ねてみたかったのだ。
チャオ!
どう見ても10代の男の子に声をかけられた。わ、私ですか?わたし?
東洋人は若く見えるんだろう。
悪い気はしないのだ。
橋を越えたら、イタリア旅行本で気になっていたカフェに入ってみた。
片言で、一名で予約していませんが入れますかと尋ねたら日本人の女の子が奥から出てきてこの後は全て対応をしてくれた。
メニューを見て、わからないことを尋ねられるだなんて!素晴らしい!おかげでとても美味しいトマトソースのパスタとジュース、食後にコーヒーという夕食をとることができたのだ。
帰り道には日が暮れて街には明かりが灯っていた。
昼は観光客ばかりだったが、何時の間にかデートスポットに変わっていた。
綺麗だなぁ。
すれ違ったアートガーファンクル似のおじさんにお茶でもいかがですかと言われたが、私は会話能力がないんですと返事をして別れた。イタリア語はまだボナ セーラとブオーノしか出てこない。午前中の挨拶、ボンジョルノが出て来なくて思い出せるまで中に入らずに外に居たりする。そんな私でも簡単なやり取りが出 来ているのが不思議なくらいだ。
角を曲がったら広場に出た。メリーゴーランドが回り、テラスで夕食を楽しむ人達で賑わっていた。
フィレンツェは景色が写真におさめきれない、訪ねてよかった街だと思ったのだった。