ヴェネツィア2日目。
ここのホテルの朝食はとても充実している。パンや果物は種類も豊富で卵料理も野菜もしっかり採れる。飲み物も選択肢が多くクッキーなどのお菓子類もあり、大きなフルーツタルトまで置いてあるのだ。さすがに朝からケーキは食べられないなぁと思ったが、何ピースか取ったあとがあったので、しっかりケーキまで食べている人が居るんだろう。
今回の旅で少し気になっていることがある。
それは、旅の初日からずっとそうなのだが、みんな所構わずゴホゴホと咳をするということなのだ。
マスクをつけている人は一人もいない。だが、あなた風邪ひいているでしょう⁈というような咳をしている人も、口に手を当てたりして周りに気遣う人が誰一人として居ないのだ。
だからみんな移って風邪をひいているんじゃないかしら。
あっちでゴホゴホ、こっちでゴホゴホ。だったら、と身を守る為にマスクをかけたらミラノでは犬に吠えられた。その際に飼い主さんがマスク姿に吠えていると教えてくれたので、こちらはマスク率がとても低いのかもしれない。
でも…。
みなさん咳しすぎ。
朝食を終えたら少し部屋で休んだ後、ヴァポレットに乗って美術館やギャラリーの多いドルソドゥーロ地区に行ってみた。この辺りは少しお洒落なエリアみたい で、作品が展示してあったりモダンな雑貨が置いてあったりする。退屈そうに一人遊びをしている犬をちょくちょく見かけるので、写真に収めながら歩く。
イタリアに来てから、まだ一匹も猫を見かけていない。犬ものら犬は見ないが雑種犬が多い。ちょっと待って、と犬が言っているのに無理矢理引っ張られていることが少なくないので、ちょっと胸が痛くなる。
だが、フランスもイタリアも、レストランやホテルがペット連れOKという所が結構ある。ヴァポレットもわんちゃんOK なので、犬は立派にお客さん扱いをされている。社会的に大事にされてはいるのだ。
サルーテという乗り場から今度はCa’Rezzonicoという乗り場までヴァポレットに乗って移動をする。この辺りに来たのはスーパーとそれからヴィヴァルディの家がお目当てなのだ。ヴィヴァルディの家はヴェネツィアには何軒かあるらしくそのうちの一軒がこの辺りにあるらしい。
地図を頼りに訪ねてみる。
スーパーは昨日訪ねたcoopとはまた違うpuntoという所。フィレンツェで行ったチェントロというスーパーもそうだったが、お惣菜が充実していて美味しかったのと、私にとって食べ切れる丁度の量が買えるので有難い。
今日は野菜サラダとポテトと香草の炒め物、パン一つとバターを買った。
スーパーを出てヴィヴァルディの家を探す。途中前を通り掛かったケーキ屋さんにサンドイッチの隣りにオニギリが置いてあるのを偶然見つけた。驚いてそのまま店内に入ってこれはライスですか⁈と尋ねたら、オニギリだというではないか。
おお、オニギリ‼
か、買います‼
「フィッシュ、オア、ビーフ? 」
オニギリの具でこんな風に聞かれると、マズそうに感じてしまう。なんの種類のフィッシュがどんな形状で入っているのか知りたかったが、語学力がない為とりあえずフィッシュを一つ購入した。
ヴィヴァルディの家は、一階がjazzバーか何かになっているこの館がどうもそうらしい。旅行に来るまで、私はヴィヴァルディがヴェネツィアの人だとは思っていなかった。音楽家や画家は貧困に苦しんだというイメージがあるのだが、意外にも大きめの家だった。
この後ホテルに戻る。携帯の電源がなくなって来るので、朝食後に散歩に出たら必ず一度は戻って来るパターンだ。
そして充電中に、今日もまたお昼寝をしていた。
うー。今日は3時間以上寝てしまった。
起きてからしばらくボーっとし、その後昼食用に買ってきたオニギリとポテトを食べることにしたのだ。
オニギリ…。見た目はOKだが、本当にオニギリなんだろうか。
昔韓国旅行に行った時、ホテルの部屋に用意されていたミニシュークリームをパクっと食べたらキムチ味だった。シュークリームだと思って食べたからえらい混乱して不味い気分を味わったのだ。
あの時と同じになるんではないのか。
用心しながらラップを剥いて一口噛んでみた。
ん?
んんんん?
これは⁈
ビンゴ‼
これはオニギリです。胡麻が周りについて、ツナが中に入った塩味の美味しいオニギリだった。
日本のママンの味、オニギリ。
素晴らしい。
一体誰が、このオニギリをヴェネツィアに伝えたんだろう。
何故かしら私の頭にはフランシスコザビエルの姿が浮かんだのであった。
遅い昼食を採って時計をみたらもう6時になろうとしていた。
どうしようかなぁ。
もうこのまま部屋で過ごそうかなぁ。
ヴェネツィアは8時を過ぎてもまだ夕方の明るさは充分にある。窓の外を見たら6時はまだ3時ぐらいの日差しなのだ。
ちょこっと、ヴァポレットに乗ってあてもなく行ってみようかなぁ。ホテルからヴァポレットの乗り場まではすぐ。歩くのはしんどいが乗り物にだったら乗っていればいいだけだし…。と、結局また出掛けることにしたのだった。
最初に来た船に乗ろう。
最初にやって来たのはリド島行きの船。リド島は本島とは違って車やバス、自転車やバイクも走る島で、ヴェネツィア映画祭が開催されるので有名なセレブ島だ。
リド島にも今回の候補だったホテルの一軒がある。地理的な面でやや情報が足りなくてやめにしたのだが、ヴァポレットの乗り場の目の前、とても素敵なホテルだったので、写真だけでもと写真に収めた。
リド島ではほんの少しだけ歩いただけで、また本島へ移動するヴァポレットにすぐに乗って帰って来た。
気まぐれで降りたのは本島の先っぽの、S.Elena。行きの船ではここで降りる人が多く何があるのか興味があったのだが、降りた所は木々が立ち並ぶ広い公園になっていて、何だかとっても穏やかな場所だった。
ここでも、犬をたくさん見かける。
ダンボ、どうしているかなぁ。
会いたいなぁ。
離れてみてやっぱりダンボのことが大好きなんだわと改めて思うのであった。預け先のY氏のお家ではすっかり可愛がってもらって自分の家としてくつろいでいるらしいので、ダンボは寂しがっていないようなのだが。
その後更に、やって来た船に乗って行き当たりばったりな移動をして、すっかり暗くなってからホテルに戻ったのだ。
陽が暮れてからはヴァポレットから街を見たらさぞかし夜景が綺麗なんだろうなぁと期待したのだが、夜景というより夜になりましたという普通に暗く寂しい景観になっていたので、これは意外だった。
景色よりお酒を楽しむのが夜のヴェネツィアなのだそうである。
ところで、ホテルに帰ってからもずっと足元が揺れている。
船に乗り過ぎたみたいである。