「ウワフッ、ウワフッ」
またダンボは夢の中で吠えているらしい。
寝ている時の「ワンワン!」は、実際の吠える声とは違って小さな声が出るだけだが、寝ながらでも怒っている様子は伝わってくる。吠えている時、ダンボの体はピチピチと陸に上がった魚みたいに跳ねているのだった。
「ウワフッ、ウワフッ」
小さな声に気付いてダンボの方を見ると、顔は寝た顔のまま。体は横になっていたり伏せになっていたりいろいろだが、寝ている時の姿勢のいずれかで、初めて見た時は具合いでも悪くなったのかと思って心配になったのだ。
犬の夢も日常の景色が描かれているらしい。夢の中で彼はネコを見つけたり、家の前に誰かが通るのを発見して、いつものように吠えに行っているんだなぁと思うと可笑しくなってくる。
放っておいたら割と長い間「ワフワフ」言っているので、たいていは途中で私がダンボに声を掛ける。
「ダンボ!夢だよ」
するとダンボは目が覚めて「あれ、夢だったのか」という顔を一瞬する。
「ダンボ、これは夢。あははは」
納得してくれたかなと思っていると、またウツラウツラし始める。そんな時はまたそこで夢の続きを見るみたいで、しばらくしたら「ウワフッ、ウワフッ」と体をピクピクさせて言い始めるのだった。
「ダンボ!」
一度、ちゃんと起こすとようやく寝言が収まるというのが、ダンボのパターンだ。ダンボは他にイビキもかくが、前に実家に居たジャスは寝ながら吠えることもなかったし寝言自体言っていた記憶がないので、犬にもそれぞれ寝相やら何やらがあるみたいだ。
ダンボは寝相も悪い。
一体キミは夢の中で誰と戦っているんだい。
だけど、寝言で思わず私の心は緩む。
なごむ。ほっこりしている。
「ウワフッ」
怪我をしないようにしなさいよ。
時計の針のように向きを変えながら、ダンボはよく眠りよく夢を見ている。