青山月見る君想フにて、相馬裕子ちゃんのライブ。
ここは会場と楽屋には行ったことがあるが、ステージには初めて立つ。いつも出演者が下手側から出てくる奥の所はどうなっているのかなぁと思っていたのだ。
そうかぁ。こうなっているんだ。
ここの階段は手すりがなく、階段自体も多いので、私にはちょっとした難所でもある。入り口で知らない人に「手を貸していただけますか」とお願いをしたこともあった。一階席にはほとんど降りたことがなかったので、ステージの所まで行くのはちょっと新鮮だった。
自分の座る位置から体を動かすことなく古川さんと相馬ちゃんが確認出来る。ステージの人の並びは、今までのライブの中でもベストかもしれない。
ステージにはモニターという大きなスピーカーが、それぞれの楽器の近くに置いてある。演奏はステージの上の人間は「外音」と言って、お客さんが聴くスピーカーからの音を聞くことはない。小さい会場の場合は少し遠くで鳴っている音を感じられるが、それを「まわり込みの音」と呼んでいて、演奏中に頼りにするものは「モニター」「ころがし」と呼ばれている足元のスピーカーだ。
リハーサルの時には、この「モニター」をそれぞれステージ上の人間が、演奏をしやすい状況に調整していくことがメインのやることととなる。
私にも自分がやりやすいモニター状況があって、自分がバンドの中で歌っていた時は自分の音をデカくしてもらっていたが、人の歌の演奏をするようになるとこのセッティングは随分変わる。
一番よくライブをする山口晶くんの時は、歌を大きめにしてもらう。晶くんの場合は歌をよく聴けばギターとも上手くフィットしやすい。相馬ちゃんと二人でやった時も、歌を大きめに「返して」もらっていたが、今日は古川さんのギターと自分のピアノがピタっと寄り添えたら歌が気持ちよく歌えると思ったので、とにかくギターをデカくしてもらう。
寿司屋で、「カンパチ下さい」「私は中トロ」「ボクはアナゴ」と寿司を注文するかのように、リハタイムは「ギターをもう少し」「こっちはピアノを」「歌、上げてくださーい」とリクエストをする。これがリハーサルの風景だ。
今日はバッキングの古川さんも私も、自分で歌を書いて歌うという所が、私にとってはステージの楽しみでもあった。3人共が”自分が歌う時に信頼出来る演奏者を求める”経験をしているからだ。
ライブハウスという限られた空間であっても、そこに座って聴いている人の数だけその曲達への想いと思い出がある。目には収まりきらない広い世界がそこにはあるのだ。何より私自身は演奏者に曲を大事にして欲しいとそこを一番に望んできた。
息を合わせていきたい。
あとは裕子ちゃんがお客さんをしっかり迎えてくれる。
今日のモニターには、自分のピアノの音はそんなに要らない。耳を澄ませて聞かなくちゃいけない大事なものが他にたくさんあるからだ。