今日は、ダンボの肝臓の数値の定期検査とワクチン接種で病院に連れて行った。
去年の冬、ダンボの調子がどうもあまり良くないので以前通っていた動物病院に度々連れて行ったのだが、「ただの食べ過ぎです」と言われていたことがあった。「やっぱり調子が良くないんです」と行った何回目かには「飼い主さん、あまり神経質にならない方がいいですよ」とたしなめられ、だがそれでもやっぱりそうではない気がしてならず、考えた末、前から評判がいいと聞いていたこの病院に来たのが最初だった。
ダンボは検査をしたら肝臓の数値がとても悪くなっていて、2桁で正常値の数値が1000という程まで数値が悪化していることがわかった。一時ダンボはひどく弱っていた。あんなに具合の悪い姿は見たことがなかった。
診察室で先生のお話を聞きながら「私が泣いてはダメ」と精一杯気を張っていたが、家に帰るとふとしたことで涙が出てしまう毎日を私は送っていたのだった。
あれから1年半になろうとしている。
ダンボは私の朝ご飯が終わると、「次はボクがご飯!」と飛び跳ねる。洗濯機の止まる「カチ」という音を聞いて、「ワン!」と洗濯が終わったことを教えてくれる。夕方、お散歩に行く?と尋ねると嬉しくてタコ踊りをして私を笑わせる。
ダンボは元気にしてもらえた。
A病院で診てもらったおかげだ。
お世話になったH先生のおかげだ。
ダンボは診察台に乗るといつも「大嫌い!」と先生から全力で逃げるのだが、ダンボ、ダンボが元気になれたのはここで先生が悪いところを見つけてくれたからなんだよ。
先月、検診に来た時に先生が今月いっぱいでここをお辞めになることを知った。お引っ越しをされて、通い切れなくなったのだそうだ。私としてはもうダンボはずっとH先生に診てもらおうと思っていただけに、残念なお知らせだった。
「血液検査の結果ですが、今回も正常値で安定していますね」
「お薬をやめてから半年ぐらいになるので、この数値で保てれば状態はいいですよ」
「これからは半年に一度の検査で様子を見ましょう。」
ダンボは今日も、「大嫌い!」と先生に反抗をしている。
ダンボ、先生がダンボのしんどいのを助けてくれたんだよ。ダンボが自然に元気になったんじゃないんだよ。
深々と頭を下げる私に、いつも先生は笑う。
H先生の後ろに、引き継ぎの先生だと思われる女医さんが立っていた。ワクチンを打ってもらって診察が終わると、新しい先生を紹介された。
「先生、本当にお世話になりどうもありがとうございました」
感謝を込めてお辞儀をしたら、その格好がやっぱり大げさに見えるのか先生は今日も笑っておられた。
ダンボの元気な姿にはH先生の姿がある。
ダンボが元気になってから、ダンボとの「今」を悔いなく過ごそうとより意識をするようになった。
寝る時にダンボが隣りでひっついて寝ていると、あたたかいダンボの体温が伝わって来て、私はその時に幸せな気分で一杯になる。
病院を変えなければどうなっていただろう。
ちょっとした緩みで命を失うことがあり、信念が救う命があるのだと思った。
診察室を出る時、先生はまた笑ったけれど。
もう一度ダンボを抱いて深々とお辞儀をしたのだった。