レッスンの日。Mちゃんは親元を離れている学生さんなので、部屋には楽器がないのだそうだ。なので学校に行って練習をしているみたいなのだが、会う度に上達をしていて本当に感心をする。学生の頃ってこんなに何事も伸びるんだったかなぁと自分の学生時代を振り返ってみたが、そう言えば私も一番吸収力があった時期だったかもしれない。
今は便利な世の中になった。その日のレッスンの進み具合いで、私が次にその先の譜面アレンジをして、お手本演奏のmp3と譜面のデータを一週間後ぐらいまでに送る。それで予習したくなったらしてきてもらう、という形を取っているのだが、写譜屋さんにも出さずに売っている譜面と同じクォリティのものを家で作れるということと、教材がその人のオーダーメイドで出来る。昔なら個人レッスンではそんなことは不可能だった。
難しいと思っていた「エンターテイナー」を、Mちゃんは今日で見事一曲マスターした。16分のリズムのカウンターやら、転調の連続部分やら、いろいろハードルは高かったはずだったので、半年ぐらいかけてゆっくり進めたらいいなと思っていたのだ。
弾けるようになった曲は一生の宝物になる。何より、もうこの曲が弾けなかった頃には戻ることはないのだ。
ゼロが1になるって素晴らしいことだなぁと横で感動をした。
学生時代は私も好きな曲がたくさん出来たなぁ。
Mちゃんは私のことを先生と呼ぶ。
先生は嬉しい。
先生の方がMちゃんから忘れていたことをいろいろ教えられている気がするのだった。