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投稿日:2007年01月16日

2007年01月16日

昨夜、この館は静かだった。
大家さんの話では、昨日がお引越しの日ということだったので、覚悟していたのだったが、誰も人がやってきた様子はなく、今日も一日だ〜れも来なかった。
前のお二階さんは生活もドスドスと大きな音を立てていたが、引っ越しをしていった日も相当派手だった。友だちと思われる大きな男の人達が、階段を上ったり下りたりする足音は、そのままドアを蹴って「こら〜、われ〜。おんのはわかっとんじゃい〜」と言ってもおかしくはない。もし自分の子供がこんな大男に成長したら、もう子供時代に半ズボンを買ってあげていたことを忘れ、檻でも買おうかと思う。
”お二階の新婚さん”は、部屋の内見の時もとても静かだった。いつものようにドンドン、ドスドスとやってくれる内見者達とは全然違っていたので、”静かなのがいい”と思ったが、”沈黙”となると今度は不気味に思えてくるのだった。
中野に住んでいた頃、近所の静かな部屋が、後に大事件を起こした教団のアジトに使われていたことがあった。
その部屋から騒ぎ声は聞こえてこなかった。
生活感のない部屋であることが、前を通っても感じられた。
それを思い出す。
夜、外のゴミ箱にゴミを捨てに行った時に、二階の部屋を見上げてみた。
今日も誰も来なかった。
「うるさくなるのはいや!」といった悩みの方が、まだ無邪気だったのだ。
内見から入居までの日が短いことも気になってきた。
なんで二人とも最初から足音を立てないで歩ける。
”あなた達、誰なのですか”
見えない静かな住人。
強気が弱気に変わった夜なのであった。