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投稿日:2007年01月17日

2007年01月17日

午前中、二階に人の居る気配がした。
謎のお二階さんだ。
やっぱりここに誰かが引っ越しをして来るのだ。
だが、静かである。前のお二階さんの立てる音の1/10といっていい、音は全くと言ってもいいほど気にならないではないか。
私も雨戸を開け、朝食の用意をし、いつものようにラジオを鳴らして食事をする。
一息ついたところでインターフォンが鳴った。
「今度二階に越して来ました、Kと申します」
大家さんからは、二人は新婚さんだと聞いていたが、そうではなかった。30歳前後の同棲カップル、特に男性は似た職業エリアに居ると思われる風貌だった。
ホッ。
不規則な生活サイクルや、音楽関係者は、賃貸の時に大家さん審査で落ちることがあるのだ。楽器は不可、それだけでなく収入が安定していない職業、身なりも変。私も今まで部屋を借りる時は、「ここは、社員さんということにしておきましょう」と、職業欄の所で必ず手直しが入ってきた。
そう言えば私は音楽制作会社のオフィスレディということで、この部屋に入れたんだった。そして私がここに内見に来た時には、不動産のお兄さんは上の住人のことを、「規則正しい生活の社会人さんですよ。ウチは変な人は入居させませんから。」と言っていて、私はその言葉にビビった。
自分は、職業を偽って入居をした。
静かにしなくちゃ素性がバレてしまう!
引っ越した頃、よく思った。特にここに来た時の引っ越しは、いろいろと事情があったので、もうこれからは穏やかに暮らしたかった。
実際のお二階さんは、夜中の2時頃にでかいバイクでビビバビ帰って来て、それから4時位までドスドスしていた。お兄さんが言っていた人物像とは違っていたのだ。
お二階の同棲カップルは、不動産屋のお兄さんから私の情報を得ていたんだろう。どういう説明があったのかは知らないが、「ここは同棲でなく、新婚ということにしましょう」の嘘と、あと恐らく職業欄でも嘘を吐いているので、同じく嘘を吐いている私のことも知らずにビビっていたのだ。
軽いご挨拶の間、ダンボが廊下の奥で狂暴犬となって、激しく吠えまくっていた。
「今度の日曜に引っ越して来ますので、どうぞよろしくお願いします」
礼儀正しく、菓子折りを私は頂くことになった。
私のチリチリ頭に「同類」と察したのであろう。最初こわばっていた表情の二人は”あ、なんだ。大丈夫だわ、ここ。”といった感じの顔になった様子だった。
うふふ。
大丈夫ですよ。心配ご無用。
私もたくさん秘密を抱えている住人でございます。