近くのバス通りは細い街道にもかかわらず、交通量が結構多いのだ。おまけに道が細いので、信号待ちをしている車があると、歩く場所がなくなってどこを歩いたら轢かれずに済むのかということを、この道を歩く時にはよく考えている。
轢かれそうになるから、こっちに寄ろう。
轢かれないうちに、こっちに渡ろう。
轢かれかけたので、こっちを歩こう。
約30メートルの距離の間、私はフツーの顔でテクテクと歩いているが、頭の中をパカっと開けると、いつもそういう会話がなされているのだった。
その時々で判断をする、私の轢かれない為の対策。
今日は「轢かれないうちに、こっち側に渡ろう」のパターンで、フツーの顔をして道を渡っていた。
ら、前方で視線を感じた。
「こんにちは」
「あ!」
あ。イケメンさん。
しまった、ここは派出所の前ではないか。
一瞬、こういう渡り方は交通法規的にはどうだったんだろうと、昔運転免許の学校で習った授業の中のことを思い出そうとしていた。その間数秒、考え中につき私の足は止まり、道路の真ん中で立ち止まった形となってしまったのだった。
だがここは渡っていいのか悪いのか、結局自分でもわからない。
突っ立っていたら、「気をつけて」とイケメンさんが笑って言った。
”信号、青”
”なんだかよくわからないが、取り合えず「よし」”
イケメンさんが合図をくれたので、動き出せたのだ。
イケメンさん、ありがとう。私はすっかり貴方を信頼しました。緑の紙を本当に取りに来てくれたこと、そして今日は信号のかわりもして下さいましたね。
それとこれとは違うのに、ウチにはもう「泥棒が入らない」という安心まで、なんだか得ている。
先日、防犯の心得を教えてもらったにもかかわらず、”もう鍵は開けたまま、網戸で寝ても平気だわ”と、一気にゴールデンレトリバー並みの無防備状態に入った私なのであった。