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投稿日:2010年10月10日

2010年10月10日

退院の日。
朝の検温が終わると看護師さんは、「今日退院ですね。体温計はもうこのまま頂いていきますね」と言った。
退院も嬉しいが、退院して何が一番嬉しいかと言えばやっぱり離れて暮らしていたダンボのことだ。
ダンボは前回の入院の時と同じく、会社のY氏の家で預かってもらっていた。前回もそうだったが、内弁慶のダンボは意外にもすぐに新しい家や生活に慣れて穏やかに過ごしていたのだそうだ。犬は犬で自分が生きて行くことを考えているらしい。普段私と居る時は、「この子は私が居ないとダメなんだわ」と思わせるところが多々あったのだが、私が居なくなればなったで特にしょんぼりするわけでもなく、いつもの行動をそのまま新しいご主人さまにしていたみたいで、それを知るとちょっと可笑しかったのだ。
今日はY氏がまずダンボを私の家に戻して、それから病院に迎えに来てくれるので、私が帰ると家にダンボがいつもどおりベッドの上でくつろいでいるのだろう。
早く会いたいなぁ。ダンボ。
お昼ご飯を食べて、次回の診察予定やお薬をもらって午後に退院をした。
10年前の入院期間は丸2年だったので、外に出た時にまず「コインパーキング」が目に入って感動をした。本当にあの時は浦島太郎だったが、今回はそういうギャップが一切ない。外来に行ってそれで帰っているのかなと思う程、2週間の入院期間は外の世界と切れた感じのしない時間だったのだと思ったのだった。
一時間程車に揺られて、家に到着。
「ダンボ。ただいま」
奥の部屋に入るとダンボはやっぱり私のベッドの布団の上に、今まで寝ていたんだよといった風にそこに居た。
ダンボは私を見ると・・・・。
耳をペチ〜〜〜っと倒し、警戒心のかたまりのまま私を見ている。
「ダンボ。私だよ!」
犬ってこんなに冷たかったっけ。
尻尾を振って飛んで来るどころか、しばらく耳を倒したまま私のことをジーっと見て、それでだいぶ経ってからよっこらしょとベッドがら降りて来たのだった。
1分ほどして私を思い出したのか、それとも気が変わったのか、急に私の足元で尻尾を振っていた。
<おかえり、おかえり!ボクも会いたかったよ〜>
お前それは嘘だろう。
でもいいや。また会えてよかった。待っていてくれてありがとう。
何もドラマティックなことがなく、そしてまた日常に私は戻って行くのだと思った。そういう平坦で平穏な一コマがずっとこの先も私の中の幸せな出来事として記憶されていくんだなぁと思った。
ただいま。
約一年程、原因がわからないまま体調に翻弄されていて、夏からは検査続きで不安は消えてくれなかった。長い間、漠然としたグレイのものが胸の中から出て行ってくれず、押しつぶされそうだった。
ようやくpauseボタンが解除された。
久しぶりに胸のつかえがおりた夜だった。