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投稿日:2010年10月25日

2010年10月25日

上手に食べられないという理由もあってか、焼き魚はそれほど好きな方ではない。だが、近所のどこかの家で焼き魚をよく食べる家があるようで、早い夜外から帰って来たり玄関を出た時に焼き魚の匂いがして来ることが結構あるのだ。
少し気温が寒くなって来たなぁと思う頃に嗅ぐ焼き魚の匂いって好きなのだ。
小学生の頃そろばん塾からの帰り道に、焼き魚の匂いで急にお腹が減ってきて今日の晩ご飯は何かな?と楽しみにしながら家路を急いだというのが、私の焼き魚の懐かしい思い出だ。
で、私の家ではほとんど焼き魚は出なかった。
シャケのホイル焼きかブリの照り焼き、サワラを焼いたのがたまに出て来たが、サンマやアジは一度も食べたことがないまま私は大人になったのだった。
理由は父にあった。
父は焼き魚の匂いが大嫌いで、たま〜に母がサワラか何かを焼いている時に父が帰って来ると必ず「なんや!くっさいなー!魚やっとんのか!」「くさっ!くさっ!なんやこの臭いは!!」と大げさに空気を切るようにして腕を振って機嫌を悪くしていたのだ。
母は焼き魚が好きだったのかどうかわからない。だが母もそれほど好きではなかったのだと思う。サワラの焼いたのはいつもパサパサで、美味しくなかった。
外食先で、魚を上手に食べられる人のことを私は尊敬する。食べ終わったあとのお皿が綺麗なのは、子供の頃から魚を食べる習慣があったからだと思う。そして私はどれだけ丁寧にほぐしているつもりでも、ぐちゃぐちゃの残骸風な食べ残し皿になってしまうので、ますます焼き魚を食べなくなってしまっている。
焼き魚の匂いは、私にとっては食欲をそそる匂い。
父は焼き魚の匂いの何が嫌だったんだろう。
そんな父も臭かった。
「なんや!魚焼いとんのか!くっさいわー。窓開けぇっ!」
大げさな声で言う父にちょっと私達は冷めていた。
おやじ加齢臭の方が、私や妹にとってはよっぽど臭かったのであった。