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投稿日:2010年02月01日

2010年02月01日

天気予報では夜は雪になるということだった。
夜の11時。仕事を終えてビルを出たら雪が3センチ程積もっていた。更に雪はまだ今も降り続けていて、ここに来た6時間程はそうではなかったのに、東京はすっかり「雪の降る街」に変わっていた。
あたたかいビルの中に居たので雪が降り出したことさえ、全く気づかなかった。
少し前にすれ違った人が「滑るから気をつけたほうがいいですよ」と声を掛けてくれたが、ほんとうだ。これは滑りそうだ。
駅までの道のりは約5分。
傘は持っていたけれど、滑って転んで怪我をすることを思い浮かべたら、ここは雪に濡れてもよし。傘と杖の二本で雪道を確実に歩こう。
いつもよりゆっくり歩き、駅に向かう。
後ろから来た人がまた一人、また一人と私を追い越して行く。
寒いので寒さを紛らわそうと、小声を歌を歌っていたら・・・・
ふと頭に降り掛かっていた雪がやんだ。
「駅まで、よかったらどうぞ。」
振り向くと女の人が傘を私にさしてくれていたのだった。
「杖だと、傘させないですもんね」
そう言って、駅までの道を私に傘をさして一緒に歩いてくれたのだった。
「電車、大丈夫ですか?私、歩くの遅いから」
遅い時間なので、一本逃すと大きい。私に親切にしてくれて、それで電車に遅れてしまったらどうしようと気になったのだが、彼女は「もう帰るだけだから、私は大丈夫ですよ」と返事をくれたので、そのまま彼女の好意に甘えることにしたのだった。
駅ビルに着いて、
「ありがとうございました。助かりました」
お礼を言うと、
「風邪、ひかないようにね。じゃぁ、さようなら」
そう言って、彼女は足早に去って行った。
一人で歩けば、きっともっと早く駅に着いていた。
<ありがとう。>
多分私より年下の女性。
話し方がとても素敵だった。
笑顔と口調の柔らかさがとても胸に残った。
優しいバトンをもらった。
このバトンは誰かにまた渡さなくちゃいけないバトン、そんな気がした。
素敵な女性だった。
雪降る寒い帰り道、あたたかい贈り物を私はもらったのだった。