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投稿日:2010年02月06日

2010年02月06日

すぐ近くの家の犬の話だ。
ここの犬は柴犬を一周りか二周り大きくした恐らく雑種の犬。ここに私が引っ越してきた時に、時々夜シーンと静まりかえった所に「ワオン、ワオン」と鳴くことがあったので、「昔は犬と言えば、外につながれていて、番犬の役目をしている犬が多かったよなぁ」と、その声を聞きながら思っていたのだった。
ダンボを連れて、散歩に行く時にはチラっと見てみる。
塀で見えにくいが、そのお宅の玄関の前に犬小屋があってそこでつながれて過ごしているようだった。別に人なつこい犬でもない。だが目が合うとジっとこっちを見ていたりする。吠えられるかなと思ったが、一度もダンボを連れていても吠えられたことはなく、そうかと思えば私の前を歩く人には吠えたりもする。
いつもそこに座っている、その犬のことが気になっていた。
寒くないのかなぁ。
暑くないのかなぁ。
家の人が玄関の所に居ると、その犬はとても喜んで飛び跳ねていた。そういう場面を二度程見たっけ。
<無邪気なところもあるんだなぁ>
外で鎖につながれてずっと過ごすって、ストレスじゃないかしらと心配もしたが、犬にすれば飼い主さんが決めたことに不満はなかったりするのかもしれない。
だが今年に入って、その犬の姿が見えなくなっていた。
最初は散歩中なのかなと思っていたのだが、そういえば鳴き声も聞いていない。どうしたんだろう。散歩の時に何度か背伸びをして塀の向こう側を覗いてみたけれど、犬は居なくなっていた。
<ワンちゃん、居なくなっちゃったね>
玄関がその日から少し暗く感じるようになっていった。
何度通っても、もう犬の姿は見えなかった。
”今日は居るかしら”と思い続けていたが、もうあまりそのことは考えないようになっていった。
もう居なくなってしまったんだ。
切なくなるので、理由はぼんやりとしか考えないようにしていたが、亡くなった以外には考えられないだろう。人の家の犬でも、やっぱり死んでいなくなるとやっぱりとても悲しい気分になる。
そして2月になった。
「ワオン」「ワオン」
<あら?>
ダンボとの散歩の帰りに久しぶりに小さく、あの犬の声がした気がした。
「ワオン、ワオン」
<あっ。>
少し見えにくい場所だったが、あの犬に間違いない。
背伸びをしたらあの犬が居た。
たまたま会えなかっただけなのか、いやそれにしては気配が無さ過ぎた。
<ダンボ、あのワンちゃん生きていたね。よかったね>
ダンボはもうすぐ大好きな家に帰れる場所に来たから、嬉しそうに尻尾を振って走る。今日のお散歩は楽しい終わり。ダンボと私の二つの影が、夕暮れに弾んだ。