今日の夕飯は湯豆腐にしようと、カセットコンロセットを部屋に持って来たのだ。
私はこのカセットコンロがちょっと怖い。と、いうのもボンベを上手くつけられないことがあって、「シュー!」と音を立ててガスが漏れたり、あとはやはり一人でわざわざ火を起こすということ自体に緊張をするのだ。
その私の緊張感が犬に伝わるからなのだろうか。
ダンボは私がカセットコンロを部屋に持って来ると、いつからかエラい勢いで吠えるようになったのだ。
まず机にコンロを置く。
すると、それを発見したダンボが慌てて飛んで来る。
そして激しく吠える。
のだが、犬語なのでやっぱりそれはどういうつもりなのかはわからないのだ。
だがわからないなりに、犬語を雰囲気で訳してみた。
まず、机にコンロを置く。
「ワンワンワワ!」
(またコンロやるつもりなんか!)
「ワワワワワン!」
(もうやめとけって!)
「ワンワンワン!」
(爆発すんで!)
カセットボンベをドキドキしつつ装着。
「ワンワワワワワン!」
(だからあぶない!って)
カチっ。
装着出来ると私もだいぶホっとする。
次のドキドキが、点火なのだ。これが何回か空振りをしたあとで「ぶおぉおおお!」と大きな音を立てて一瞬強火が上がるので、多分ダンボはこれを恐れているんだろう。
「ワワワワ!」
(危険だからやめろ!)
というか、私に飛びかかって暴れるので、私の手元が狂ってそっちの方が危ない。
カチっ。
”ぶぉおおおお!”
ホっ。セーフ。
何故かしらいつも無事に点くと「助かった!」と安心している。
それがやはり犬にはわかるんだろう。さんざん吠えついていたダンボは、不思議なのだが点火が終わると吠えるのをピタっとやめる。そしておとなしくまた元の場所でくつろぎ始めるのだった。
カセットコンロを使う時は、手に汗握る大仕事。バンジージャンプで飛び降りる時と同じぐらいの勇気で使用しているのである。