夜、DVDを借りにレンタル店に行った。何本か借りようと「お笑い」のコーナーに行ったときのことだった。
この「お笑い」コーナーは近くに「アダルト」コーナーがあるのだ。なのでこっちの通路に入って来た人は「お笑い」か「アダルト」目当てかのどちらかで、なんとなく店の隅にある、やや陽の当たらないエリアなのだ。アダルトコーナーはのれんがかかっていて、更に小部屋になっている別室に入る。別に後ろめたいことは一つもないのだが、なんとなくこの通路に長居したくないというのが、いつもここに立った時の気持ちで、この日も早く楽しそうなDVDを見つけて立ち去ろうと思っていたのだった。
そこに向こうから若いお父さんと幼稚園ぐらいの息子さんがやって来た。
のれんの部屋に気づいたチビくんが立ち止まって言う。
「中に入ってみようか」
若いお父さん、「あぁ、入らないよ」
お父さんは子供連れなのですごく大人な返事をしてその場をやり過ごそうとしていたのだが、子供にすれば秘密の部屋っぽいここに何があるのか確かめに行きたいというのは自然な興味だと思う。
「中に入ってみようか」
もう一度お父さんを誘った。
するとその後ろから来たお母さんが、「いいの、入らないのよ」とダメ押しでなんとか子供をその前から押し出したのだった。
お母さんと私が目を合わせて思わず笑ってしまった。
<困っちゃったわ>
<そうですよね〜>
軽く会釈をして若い家族とすれ違った。
あの男の子も、大きくなったら秘密の小部屋に行く日が来るんだろう。それにしても、無邪気な好奇心で可愛かったなぁ・・・。
と、思った瞬間に、
絶妙のタイミングでスーツを来た男性が今家族が去って行った方角から歩いてきて、ササっと秘密の小部屋に入って行ったのであった。
一瞬時がワープしたのかと思った。
は、早すぎる。
あの男の子が大人になって戻って来た、まさにそんな感じで私はしばらく秘密の小部屋の方を、目を白黒させながら見つめていたのであった。