少女の頃、眉村卓さんや星新一さんのSF小説が流行って私もよく読んだ時期があったのだ。
宇宙、未来、四次元、タイムマシン・・・。寝る前にそれらを読むと、自分もふと気を緩めた瞬間に「現在」から消えてしまうかもしれない・・・と想像してちょっぴり怖くなったものだ。
四次元はあるかもしれない。そう思ってから私は道のはじっこを歩くのをやめた。多分読んだ本の話の中に電信柱の隙間を通ったらそこが四次元の世界への入り口だった、というようなくだりがあったからだと思う。
それから友達がいつもと感じが違うと、「もしかしたら、宇宙人が彼女のフリをしているかもしれない」と真面目に観察したこともあった。
母のことも”いつもはここで怒るのに、どうして怒らないんだろう”と思ってから、しばらく本気で母のことを疑っていたことがあったのだ。
<本当のお母さんが、こんなに優しいわけがない>
そんなことを思いながら夕食のマカロニサラダを食べつつ、母を監視していたとはまさか当人は知らないままだっただろう。
<やっぱり。どこか変な気がする>
それからは本気でホクロの場所や、言葉遣い、本物の母とは違う箇所を見つけ「シッポをつかもう」としていたっけ。
それほどSF小説は私にとって衝撃的かつ影響を与えた世界だった。
当時、PTAが土曜日にやっていた「8時だよ!全員集合」を、子供にふさわしくない番組だと危惧していたが、子供の想像力はもっと親が考えるよりもぶっ飛んでいる。
母も、テレビじゃなくて本をたくさん読みなさいと言っていたが・・・・、
別に賢い子供に育つわけもなく、母が勧めた読書で私は母を宇宙人だと思っていたのである。