1899年の今日、日本で初めて食堂車が連結された列車が走ったのだそうだ。
1800年代に食堂車があっただなんて、ちょっと想像がつかなかったが、きっとそれはそれはセレブな空間だったに違いない。
私は子供の頃から東京の祖母や親戚の家に行くのに、新幹線に乗る機会が年に一度程あった。新幹線に乗る時だけは「缶コーヒー」を買ってもらえ、リッチな気分でUCCのミルクコーヒーを飲んだものだったが、あこがれは「食堂車」だった。
駅を出ると新幹線の車内アナウンスが聞こえてくる。「ビュッフェ」という響きがとても素敵で、何度か「行ってみたいな」とねだってみたが、一度も連れて行ってもらうことはなかった。
お手洗いに行った時にちょこっとのぞいてみる。
大人の人が座っているのを見ると、なんだか優雅にくつろいでいるみたいで、私も大人になったらきっとビュッフェで過ごすぞと思ったのだ。
実際に大人になると、母と同じ感覚になり、「ビュッフェでご飯だなんて、高くついちゃうから行かないわ」と席を立つことはなかったが、それでも二度程食堂車で過ごしたことはあった。
テーブルや椅子も「食堂」っぽく、メニューも至って感動するような味ではない。それからやはり列車の中だけあって常に小さく揺れていて、ホテルのラウンジでゆっくるくつろぐのとは随分違っていた。思っていたのよりずっとチープな空間だった。
が、車窓からの景色が流れて行く中でお茶を飲むのは、他では得られない何とも言えない特別な感じがした。それが何より大きなくつろぎを与えてくれた。それが私にとっての食堂車だった。
すっかり少なくなった食堂車のある列車。もうちょっとだけ数があってもいいんじゃないかなと個人的には思うのだが・・・・。
夜にちょこっと見ることがある「世界の車窓から」。
今はあの番組の中で、ビュッフェに座っている感覚を疑似体験するだけとなった私なのだ。