とっても小さかった子供の頃。女の子たちは「ママ」の話しているような言葉使いの真似をしていた。その一方で男の子の使う言葉は「グワーッ」「ゴォオオオ」「ガキーン」などの擬音語で文章はあまり駆使していなかったように思う。
「グィーーン」と旋回して着地する飛行機だったり、「グォーーー」と音を立てながら大きなものを動かすクレーンだったり、「ドドドドド」という道路工事のドリルの音だったり・・・。
女の子たちにはちっとも興味のない世界だったが、男の子はみんな楽しそうだった。大きなものを作っている、またはそれを操作しているということが男の子たちのあこがれだったのだ。上手く説明出来ないけれど、あの成り切った「グィ〜〜〜ン」や「バキューーーン」や「ガガガガガー」が小さい胸の中でははちきれんばかりのロマンを表していたのだと思う。
そして大人になった今も男の人達は「カシャ〜〜ン」「ゴォオオオ〜〜」が好きなのである。そういう仕事には就かなかったが、そこからの流れで「ガンダム」のフィギュアを集めたり車好きになったりと、ベースはやはり擬音語で成り立つものばかりに結局は興味がある。大きなものを作る現場や、それを操作することはやっぱり一生を通じてあこがれの「男の現場」なんじゃなかろうかと想像をするのだった。
モリナガ・ヨウさんの「モリナガ・ヨウの土木現場に行ってみた!」
ここにはそれら男の子たちの大好きな「音」が聞ける場所が詰まっている。しかも普通なら中に入れないような場所ばかりで、秘密の要塞の覗き見するような特別感もある。こういう場所は全ての仕事が終わったあとで出来上がったものにしか私達は触れることがないが、大きなものを作る過程はやっぱりかっこいい。完成したらここを車が走るのだ。完成したらここに水が流れるのだ。完成したらここに地下鉄が走るのだ。
この過程の鉄骨むき出しの「これは何になるのか?」という段階に女子は興味を持たない。が、男子はワクワクするのだと思う。
モリナガさんも「ガァ〜〜〜〜〜」「グィ〜〜ン」と言いながらそれらを絵にしたんだろうなぁ。
いつまでたっても飽きずにモさんの本を眺めている大人の男の子が見える。
ふふっと笑えてきたら・・・・。
表紙のクレーンが「ウィ〜〜〜ン」と言いながらこっちを向いたのであった。