大学生の頃、今位の時期はサークルの夏合宿に行っていた頃だ。
二回生以降は夏合宿は志賀高原のペンションを借り切って4泊5日とかそれぐらいの日程で合宿が行われていた。私が所属していた軽音楽部の部員はだいたい40〜50名で、大型バスが一台と上回生の車数台で移動をし、大学時代の私の夏の最後の思い出はこの軽音楽部の夏合宿だったのだ。
現地のペンションは貸し切りなので、普通の防音施設もない部屋がスタジオになる。着いたら3つか4つの簡易スタジオを部員で楽器を入れて合宿用のスタジオの出来上がり、その日から朝から晩まで部員達が練習をするのが合宿だった。運動部のしごきとは違って、軽音楽部は「練習、いやだなぁ」というのがなく、練習時間の割当てが少ない方が文句が出る。今思えばあんなに夢中になってよく全員が練習に明け暮れたなぁと思う。「サボりたい」というのがないめずらしい合宿だったのだ。
夏の志賀高原は暑さがそれほどでもなく、山独特のひんやり涼しい空気があった。残暑の頃の日差しと緑の匂いがして、すごく大人に思えた4回生が「最後の夏」を思い切り悔いなく楽しんで過ごしているのが感じられると、少し寂しく思えたのだ。もうすぐ居なくなってしまう蝉達のように、精一杯羽根を鳴らしているそんな感じがした。
「俺はアイツとは合わんわ」
小さな人間関係のこじれや派閥もあったし。
青臭い話で真剣に語りあったりもした。
それらは今からすれば本当に取るに足らないことばかり。
でもあっているか間違っているか、大人で冷静な判断が出来ることよりも、当時自分が真面目に考えていることを一歩足を踏み出して声に出来たことが何より素晴らしかった。
母校のうんと後輩達は今年も夏合宿の頃なんだろうか。
精一杯鳴く蝉と同じぐらい今に心傾けて。
処暑を過ぎて今年の夏もゆっくり終わりへと向かっている。